♠ 屋久島海亀保護活動報告書 - 新石 学弘
海ガメ知識 2015.01.19
12月6日忘年会でお話した海がめについて、今回海サOB会幹事さんからの要請で、特集をネット配信すると特別のご配慮を頂き一部内容を編集しました。 残念ですが、余り写真が有りません、悪しからず。
私が2014年4月から9月までの6ケ月間、鹿児島県熊毛郡屋久島町永田での生活体験をお話します。
何故屋久島に行ったか? 友人からNPO法人の運営を改善したいとの支援要請が有り、丁度単調な日々の生活を変えたいと思っていた時期で、珍しい海がめを見てみたいと、年齢も考えずに引き受けた。 当初1年間の予定だったが、一身上の都合(健康上)により6ケ月で中断、退職する結末になった。 . 1) 永田地区とは 屋久島の中でも歴史のある部落で人口500人(世帯数260)、小さな店が2軒、理髪店1軒 居酒屋2軒、豆腐屋1軒、ガソリンスタンド1軒、小学校、郵便局、稲作農家等がある。 主に海がめ観察会で観光客の訪れる屋久島北西部に位置する。 2) 屋久島は、道路が完備していて一周約100km(西部林道は路線バスは走ってな い)、車での島一周所要時間約3時間、片側1車線の舗装道路。島中央に高い山(1900m)が有り、風向きにより天気が変わる、傘は日常必需品として持ち歩いていた。車は軽自動車が多い。 3) 永田には、スーパーマーケットは無いので、約20km離れた宮之浦まで毎週食料を買いに行った。 4) 離島生活及び単身赴任を考えて、6月間飲酒、喫煙は完全に止めた。その最も大きな理由は、3月上旬送別会で酒に飲まれ大きな失態をした事。 5) 毎朝約2時間朝ご飯前に浜辺を歩き、浜辺の状況、海がめの生態を調べた、結果2kg減量。 生態調査員に最初同行したが、高齢者は夜間の視界能力が低くカメか、岩か、流木か判別出来ず 同行を諦めた。特にアカ海がめに噛まれたら大怪我をする。 6) 7月下旬、長男家族が屋久島を訪問、海がめの産卵見学、海水浴、ヤクスギランド、大川の滝、西部林道でのヤクシカ、ヤクサルを見物した。これを機会に私自身も休日を利用し一部の観光地: ヤクスギランド、千年杉、白谷雲水峡の一部、一湊等を散策した。 (屋久島でのトレッキングは、ガイド付きがお薦め、天候変化、個々の説明等有効) 有名なカヤックツアー、ウオーターダイビング等は時間が無く体験できなかった。 7)夜浜辺での夜空は素晴らしい眺め。天の川が頭上に迫る(以前豪州の砂漠で見た夜空、エジプトの砂漠で見た夜空とは異なり)浜辺で空気が綺麗なのか? NPO法人の運営 初めてNPO法人の運営を見たが、事務局と生態調査現場に分かれ、生態調査はボランテア主体で大学研究生、海洋学研究者、海がめ愛好者で、期間は7日間から2ケ月の長期といろいろ。 海外からも参加(2014年に参加した人の国籍は、台湾、ロシア、フランス)生態調査は海がめが上陸する午後9時頃から朝5時頃まで、雨天、強風に関係なく厳しい作業環境。 作業はタグ番号確認、新規にタグ取付け、甲長甲幅測定、産卵状況、穴掘り状況等記録用紙に記載するが、海がめが光に敏感なので、超小型ライトの手元で作業を行う。又生態調査の他、卵の移植、消波ブロックに、はまった海がめの救出作業等も行う。 ボランテアは昼夜真反対の生活をするため、体調に自信なければ勤まらない。又生活は共同生活で食事、清掃等も当番制、睡眠は板の間に各自寝袋で休む。(プライバシーは無い)
海がめについて 1. 海がめの種類 世界には8種類の海がめが居て(国際自然保護連合の絶滅の恐れあるレッドリストに記載)、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ、ケンプヒメウミガメ、ヒメウミガメ、ヒラタウミガメ、クロウミガメ、オサガメ (クロウミガメとアオウミガメは同一種類) 日本に上陸し、産卵するのは3種類の海がめ、アカ(Logger head turtle)、アオ(Green turtle)、タイマイ(Hawksbill turtle)。 2. 海がめの上陸地 海がめは、屋久島のあちこちの海岸に上陸するが、中でも永田浜地区(屋久島の北西海岸)は日本で又北太平洋地区で最も多くのアカ海がめが上陸します。 (最盛期には約100匹以上/夜上陸する)期間は4月~8月上旬(海水温により上陸時期が異なる)アオ海がめは海水温の高い場所を好み小笠原諸島に多いが、屋久島への上陸数は少ない。 タイマイは沖縄諸島に多く、甲羅はベッコウ細工の材料になる。 鹿児島県条例で、海がめの卵を食べたり、許可なくしてカメに触れたり採ったりは出来ません。 (小笠原諸島では、現在も食用に市販しています、30年前は屋久島でも、食用にしていた記録がありましたが、鹿児島県条例で規制、保護され、近年上陸数が増えたと言われています) 3.海がめとは、 大きさは種類で異なりますが、アカ海がめ、アオ海がめは、体長70~100cm、体重75~100kg アオ海がめはアカ海がめよりも大きく、前肢も長く、陸上での肢跡も異なる、 (最も大きい海がめは、オサガメ(Leatherback turtle)で、体長2.5m、体重1 tonで水族館では飼育出来ない) 卵から孵化して、砂浜に出てきた子ガメは、体長さ7~8cm、20g程度です。 海がめの頭は、陸ガメの様に甲羅の中に、引っ込む事は有りません。(小学生に質問されました)海がめの大きさは、甲長/甲巾で表現する様に国際法で決められています。 関東地区の新江の島水族館では、2014年海がめコーナーを作り、身近に海がめを見る事が出来る。 4.海がめの寿命 寿命は正確には分かっていません、千年、万年とは言われていますが、現在徳島県の水族館にいるアオ海がめが1950年生まれ、カメが卵から孵化して産卵するまでに30年と言われています。 現在、研究途中で今後2~30年後に分かると思います。 海がめのなみだ=海水と共に海藻を食べる、体内の塩水が、涙腺から出るのが、涙に見えるのです。 5.海がめの産卵 産卵時期は4月~8月、今年は海水温が低く5月から8月中旬でした。産卵は115個/回、1シーズンに平均3回産卵する。過去最高は6回。卵の大きさはピンポン玉、殻は鶏と比べると柔らかい、残念ながら鹿児島県条例で食べる事は出来ない。卵白は湯出ても固まらぬ、卵黄はコラーゲンが多く、終戦後、2~3個食べた人の話では、汗でシャツが黄色くなると言われた。 6.海がめの産卵行動 1)海がめは臆病、特に産卵前は神経質で、ライトの光、人の動きに敏感に反応したり、穴掘りに失敗し産卵せずに帰海する。上陸しても産卵するのは、上陸数の約半数45~50%。 2)産卵行動は、穴掘り、産卵、穴埋めで、特に穴掘りは、後肢のみで行い、穴径25cm、深さ60~70cm(後肢の動きは絶妙)どうして穴の深さを海がめが判断するか? 砂場により穴掘り中に崩れる場合が有り、その時は場所を移動し新たに穴掘るする習性が有る。 産卵後は、穴埋め作業を行い、人間にも分らない様にカモフラージュし帰海する。 専門家は、産卵場所は分るが一般に穴掘り失敗した場所を(穴掘り跡)産卵場所と勘違いする。 3)産卵場所は、比較的砂浜の奥(高い場所)を選ぶが、中には波打ち際に近い場所に産卵する海がめも居るが、この場合は調査員が卵の移植を行う。 7.海がめの行動 1)オスがめは、生涯海中で上陸はしない。交尾は海中で行い、4~5月穏やかな浜辺から交尾をしている場を見る事もある。長いもので5~6時間、 2)海がめは、前進するが、後進は出来ない。(リバースギヤーは無い)。 3)紫外線光に弱い(反応が敏感)、 4)アカ海がめは頭デッカチで顎の力で、エビ、カニを食べる、比較的浅い海中に生息、高速船のスクリュウで甲羅の破損したカメを時々見る。浅い所に居るので甲羅に海ツボが生息する。 一方アオ海がめは胴体のわりに、頭が小さく海藻を主食にし、深い所に生息するが、 最近フィプロパピロマと言う腫瘍の付いた疫病のアオ海がめが発見され、海水の汚染が問題になっている、将来人間に影響が出るとも言われている。(要注意) 5)海がめは肺呼吸をする。 8.子ガメ 1)卵は砂中の温度により異なるが45~75日で孵化する。また砂中の温度に依り性別が分れる。摂氏29.5度以上でメスになる。(人工ふ化で調整すれば性別調整可能) 2)卵に胚が有り、移植の場合、胚の位置を間違えると子ガメが殻から出られない。 3)子カメの生存率親ガメになる確率は1/5000と言われている。多くの天敵に襲われる機会が多い。砂中=スナガニ、タヌキ、人の足跡(圧力)。砂浜=カラス、トンビ。海中=サメ、大型魚 4)腹甲羅の色:アカ海がめは黒色で落ち葉に似ている、アオ海がめは白色 9.海がめの不思議(私自身の疑問で、どなたかご存じならば教えて下さい) 1) 海がめの方向感覚はどうして分かるか?メキシコまで回遊すると言う。子ガメが海に向かうには、潮の匂い、波の音なのか? 近くに川(水)が有っても、そちらには行かないのは? 2) 産卵時、後ろ肢で直径25cm、深さ60cmの穴を掘るが、本能で穴掘りする? 自身で深さを調整する能力? 産卵体勢から穴の深さは見えない、 3) 卵のふ化は、なぜ砂中温度の高低で、オス、メスに分れるのか? 4) 親ガメが産卵時、浜辺に産卵用砂場が有ることをどの様に把握するのか? 5) 子ガメの卵角で卵の殻を割ると言われているが、誰に教わるのか? 6) どうして1回の交尾で、3回以上の産卵行為が出来るのか? 7) 海がめは、は虫類なのに,何故、海に生息している? 10. 海がめの保護活動 1) 海岸の漂流物が海がめの生命を奪う、子ガメの帰海行動の邪魔になる、浜清掃を実施。(漂流物:ペットボトル、漁業具、照明電球、lighter、廃油缶、ビニール袋、浮具等) 2) 海がめは、ビニール袋をクラゲと間違えて食べ死に至る。 3) 浜辺を保持するため、松の木の植樹/保持を定期的に行っている。 4) 産卵巣が歩行者に踏まれない様に、一部の浜に、保護柵を浜辺に設置する。 (子ガメの巣穴からの脱出を助ける) 5) タヌキ捕獲用罠を設置(浜の海がめの卵を掘り出し食べる)なかなか捕まらない。
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